“悩み事”は、マフィアのごちそう!?成長しあう部活
コルクラボでは2019年に『BOOK LAB TOKYO』(現在はオンライン店舗のみ)で、”コルクラボ選書棚”を設置させてもらったことがある。
そのとき、カディが紹介した1冊の本が、部活発足のきっかけとなった。紹介したのは『学習する組織――システム思考で未来を創造する』(ピーター・ M・ センゲ著)である。部活の名前にもなっていて、教科書、指南書、血の掟として掲げられている1冊だ。
カディは次のように紹介する。
社会人のスタートに読むべき最重要経営書。組織で学習し、その学びによって成果を出すための考え方が書かれている。複雑な問題を解くためには、事象の構造を理解し、記憶から消えてしまうような長いタイムスパンの因果関係を追いかけ続けることが必要だと理解させてくれる。読んでない人とは世界の見え方が必ず違ってくる。早く読め!
そして、この本に興味を持ったラボメンたちが、夜な夜な読書会を開催するようになる。本の内容について話すために集まっていたメンバーは、いつしか自分たちが持つ組織課題についての話を始めた。
そしてメンバーは、自分たち自身の課題解決に取り組むため、議論の場所をコルクラボの”部活”へ移し「学習する組織マフィア部」を誕生させる。通称、マフィア。参加するメンバーは、ファミリーと呼ばれている。
マフィアは、自分たちが抱えている課題を『学習する組織』にあてはめながら考える場所となった。
今回は、コルクラボの中にあるビジネス系サードプレイス的な部活「学習する組織マフィア」についてご紹介します。
このインタビューは「部活・PJインタビュー」シリーズです。このシリーズでは、2021年1月にコルクラボで実施した「おすすめ部活・PJアンケート」で上位に選ばれた6個の部活を紹介しています。
※コルクラボではタメ語で話す文化があります。今回もいつものようにタメ語でインタビューを行いました。いつものコルクラボの雰囲気も併せてお楽しみください。
■学習する組織マフィア部の紹介メンバー
話し手:カディ(4期)
学習する組織マフィアの部長。口癖は「また今日も最高の夜にしてしまった」。知識の幅が広くて深い。専門分野は会計とか監査とか。意外と照れ屋。
話し手:だいすけ(6期)
タイ在住。筋トレマニアの釣り人。夢は100キロのマグロを釣ること。本職は不動産関連。オンラインでの関係性構築の可能性を示してくれる。引っぱってもくれるし、押してもくれるでっかい存在。
話し手:もりずみ(1期)
マフィアに両足を置く人。「世の中の体温をあげる」自社事業をたくさんつくったり。現在は、マフィアのメンバーに支えられ、立上げから携わっていた会社に完全出向し、取締役をやっている。
聞き手:えりん(5期)
マフィアさえ懐柔するスマイルの持ち主。お酒とピクサーをこよなく愛する。最近は、音声コンテンツでも魅力を発揮中。宇宙兄弟のムッタが理想のタイプ。
■共に学び、共に成長する場所
ーーマフィアと呼ばれる「学習する組織マフィア」は、どんな目的で始まった部活なの?
カディ:
もともとは『学習する組織』の読書会をやっていたんだけど、ただ読むだけでは全然意味がない本なんだよね。だからこの本を軸にして、自分がいる組織をよくするために、共に学び成長しあえるように部活にしたことが始まりかな。
メンバーそれぞれの課題に、ファミリーが一丸となって取り組んでいる部活だよ。
ーーなんか、かっこいいね。
カディ:
でも、難しいことを話してるわけじゃないよ。
集まったメンバーが、それぞれの会社や仕事、家庭で困っていることを語り合っているだけだからね。
ーー『学習する組織』をベースにしたやり取りをしているんだよね。
カディ:
そうだね。あと『ストーリーとしての競争戦略』(楠木建・著)も、教科書として紹介している。この本を軸に考えた時に、自分の会社はどんなふうに言語化できるだろうかってことを話しているから、部活に入る時にはぜひ読んで欲しいな。定期的に読書会をやるから、マフィアに興味がある人は参加してみるといいよ。
2冊に書かれていることはめちゃくちゃハードな内容だけれども、それをひとりで「難しい!」って言いながら、頭から湯気が沸くくらい考えても、使えるようにはならないんだ。
マフィアではその難しい内容を、ファミリーの身近な課題を使いながらじっくり話せるし、繰り返し話し合うことで理解が進んで、自分の組織の課題解決に生かせるようになる。
楽しく学べる機会を作れることが、部活としての価値じゃないかな。
ーーみんな業種の違う仕事をしているけど、社外の人と課題に取り組むよさはどんなところにあるの?
カディ:
誰かの会社の課題って、実はその会社に限った課題ではなくて、どこの会社にも通じる課題になっていることが結構あるんだ。
それに、課題とか困ってることをみんなで考えるのって、僕たちファミリーにとってはエンタメになるんだよ。
この前、あるメーカーが成長した理由と、オンライン販売で伸び悩んでいる理由について話した。
成長した理由は、問屋を使わず自社営業をしていたから。わかりやすい場所に、大量に、適切な値段で置くという、小売業の三原則がフレキシブルにできるという強みを生かしたからなんだよね。
でも、この強みはネットでは生きてこないねっていうことで、ネットでの売上を伸ばすにはどうしたらいいんだろうってことを話していた。
これって、その会社だから抱えている課題ではなくて、他の業界でも抱えるような課題だよね。
ーーたしかに。一人で悩んでも解決しない問題をもってきて、みんなで考えられるってめちゃくちゃいい場だね。
カディ:
僕らファミリーとっては「課題」も「問題」も、美味しい餌なんだよね。誰かの悩みを一緒に考えることで、学習する組織についての理解を深めることができる。違う業界について知って理解することも、自分の組織の課題解決の糸口になることもあるんだ。
部活のメンバーが増えれば、悩みの多様性も増えてくる。そうすると加速度的にみんなの学びが深まるから、どんどん参加してほしいんだよね。
僕は、大前研一さんのビジネス・ブレークスルー大学で講師をしていて、この2冊を使いながら数百社のケースを考えてきたから、だいたいの業界についての知識は身についてる。だから、ファミリーの誰かの業界のことも、簡単なことであれば相談にのれる。
最初は僕が教えることも多いけど、みんなで考えながら理解が深まればいいなと思っているよ。
ーーどんな人におすすめの部活なんだろう?
カディ:
ビジネスの勉強をしたい人にはオススメだよね。あと、自身の成長に頭打ち感があって、踊り場にいる自覚がある人。新しい成長の方向性をみつけるために、学び方をここで見つけるっていうのはいい気がするね。
株をやる人にとってもいいと思うよ。
日経新聞って企業の問題をいろいろ報道する媒体だと思うけど、それを「クイズを出されている」と思いながら読めるようになるから楽しくなる。いろいろな企業の課題を自分の頭で考えることができるのは楽しいよ。時間が経過することで答えあわせもできるし。
だいすけ:
気になった記事があったら、Slackに投げて意見を出し合ったりもしているよね。会話が盛り上がっても、全部どこかで『学習する組織』の中のワードにまとまっていくのが面白い。
難しい話をしているんだけど、共通言語があるから会話がすごくスムーズなのがいいなって、僕は思ってるよ。同じ本を読んでいるから、共通認識があって、言葉が揃っているからね。
■読書会で言葉と知識を揃える
ーーマフィアでは、いろいろな本を紹介し合って読書会をしているよね。読書会の本は、どうやって選んでるの?
カディ:
やっさんが持ちかけることが多いけど、みんなが興味もった本を読んでるね。
僕は、ビジネス書は同じことを繰り返し言っているだけだから、そんなに読んでもしょうがないってスタンスでもあるんだけど。やっさんに言われて読んでみたら発見もあるかもって思って読んでる。
でも、紹介される本が全部分厚いから読書会じゃないと読めないね。
だいすけ:
たしかに。1回4時間くらいかけてやることもあるからね。
ーー1章ずつ担当を決めて、担当が章の要約を作って発表しながら進めていく、ABD(アクティブ・ブック・ダイアログ)読書会だよね。
だいすけ:
そうそう。読書会のための準備をみんなでやるっているのが、ABD読書会の特徴だね。読書会の予定を決めたら、各章の担当を決めて、一つのシートに要約を書いていくんだけど、これがすごく学びになる。
自分で全部読み終えているのが理想だけど、分厚い本ってなかなか読みきれないじゃん。でも、読書会だと担当の章だけしっかり読んで、残りの章は他の人の要約を聞けるから、全章の内容を把握できるんだよね。
すでに全部読んだ人も、他の人の要約を聞くことでより深い洞察ができる。
カディ:
だから、勉強になるし身につくよね。
ーーただ一人で読むのとは違いそうだね。
カディ:
最初は要約を作るのが難しく感じるかもしれないけど、慣れだよね。むくも最初は文章が長くなっていて、要約の形にまとめるのが難しそうだった。「たまねぎの皮をむくみたいに、最後に残るこの章で言いたい一文を見つけてから、要約を作るといいよ」って伝えたららどんどん上手くなっていったよ。
楽しみながら学んでるよね。
だいすけ:
みんなが読んで気になったことで問いをつくっていたら、1回の時間は3~4時間かかるし、要約資料が43Pとかになってるんだけど(笑)。
カディ:
読んで要約を話すことが本番じゃなくて、本の内容を受けてみんなと話すことが本番だから、どうしても時間は長くなるよね。
参加している人が、会社のことや自分の課題について思うことを話して、それをおかずにみんなで話すんだよね。それが楽しいし、学びになる。
もりずみさんは最初から、自分の会社にあてはめるとこの章はこういうふうに理解したって話しているしね。
■マフィアだから感じる、納得感のある安心
ーー普段のラボの活動の雰囲気とは少し違う気がするね。
カディ:
それはもう全然違うね。この部活が一種の独立国みたいになってて(笑)。誰も近づいてこないところがあるよね。全然怖いことはやってないんだけど。
マフィアは、ラボの中でもビジネス系のサードプレイスとして機能してるのかもしれないな。
ーーマフィアがあってよかったなって思うことはあった?
だいすけ:
マフィアなしには僕の仕事は成立してないね(笑)。人間関係や組織の課題について、いつもマフィアで相談させてもらっている。相談して、会社で実践してみた結果を報告することを楽しめるのは、僕にとってすごく大きいね。
ラボと違うところはなんだろうって考えてたんだけど、ラボの中で悩みとか難しい話をしても、大変だったねとか、おつかれさまっていう反応が多いじゃない? それもいいんだよ。それが嬉しかったり、必要なこともあるから。
一方で、マフィアの中だと、やっさんからオススメの本がでてきたり、それは学習する組織でいうと○○と一緒だねっていうような、すごく具体的な反応をしてくれるんだよね。
自分の知っている言葉で具体的に指摘されたりすると、すごく納得感と安心感があるんだなって思った。
カディ:
“学習する組織”をつくろうっていう仲間だからね。
学習する組織でとても大事なコンセプトが、“熟練した無能”の概念なんだ。自分の無能を隠すのがうまくて、アドバイスも聞けないし、自分から分からないことを聞きにいけない人っているじゃん。装っちゃう人だよね。その状態がいちばん学習を阻害するわけよ。
だから、マフィアの中では、自分のできなかったことをさらして、みんなはそれを餌にさせてもらって学ぶんだ。できないこと、課題を伝えてくれるのはすごくありがたいことなんだよ。できない自分をさらしても、「お前だめなやつだな」とは、絶対にならないから。
悩んでる時間って、人生で一番むだじゃん。大前研一さんがよく言ってるのが「俺は悩まない、なぜなら解決するからって」。それはあんただけだよ、とも思うけど、取り入れたほうがいい考え方でさ。
悩むより解決しようってスタンスでここにいたら、みんなの悩みは自分の成長の餌になる。みんなで考えて、みんなで成長して学び合うっていう関係ができるよね。
ーーなるほどなぁ。でも、どんな人にでも向いてる部活だよって言われても、ちょっと軽い気持ちで入れないかもって思うのなんでだろう(笑)
カディ:
やっさんが意外とハードモードだからかな(笑)。
ーーやっさんのハードモードがみれる、貴重な部活だね(笑)。
カディ:
やっさんは学びに対して真面目だもん。やっさんのハードモードと、僕のソフトモードがいい感じで中和して、ちょうどいい湯加減になってるんだよ。
悩みを持ってきてくれると、僕たちはすごく嬉しいし、助かるから気軽に参加してもらったらいいのにって思ってるよ。
ハマーは、コミュニティをもっと大きく、成功させるためにはっていうお題を持ってきてくれた。コルクラボが、なんでみんながチャレンジ出来る場になっているのか、みたいなことを真剣に話していたりもするよ。
■We are growing up
ーーこれからどんなふうに活動していきたい?
カディ:
みんながみんないろんなことを考えてるんじゃないかな。難しい本の読書会をやって学び合うカルチャーを自分の会社につくりたいとか、読書会を本を売るってことに活用できないかってことも考えてるメンバーもいる。
前に、マフィアを一つの母体として、企業研修とかワークショップを請け負えるようになったら面白いかもねって話もあったよ。
僕は、みんなが出世していくことが一番の楽しみかなぁ。送り出すっていうか。
まぁでも、きっとこれからも、僕自身も困ったことはたくさんでてくるから、相談にのってもらいたいなって思ってるよね。
ここにいるみんながちょっとずつ成長しているのを感じるし、これからもみんなで協力していったら、なんでもできるんじゃないかなぁ。
コルクラボは全体的に「Let it go」(「ありのままで」アナと雪の女王のテーマ)の雰囲気だけど、マフィアは「Growing up」(イスラエルを舞台にした高校生を描いた青春映画)の場所。成長を求める人にとって居心地のいい場所になると思うよ。
だいすけ:
僕はマフィアにお世話になりっぱなしなんだ。
ファミリーで集まって飲み会したり、合宿したりなんかもできたらいいいなとは思うんだけど。
一緒に何かをしなくても、個別に挑戦したり活躍したりできる機会がたくさんあったらいいなと思うんだよね。
個人の活躍を、ファミリーに報告してくれるのもすごく嬉しい。一緒に学びあう場があって一緒に成長しているのが分かるってことに、十分すぎる価値を感じているよ。
Slack開いたときに、マフィアのスレッドに未読があるとテンションあがるよね(笑)。
カディ:
たしかに、テンションあがるね。もりずみさんも、最初から活動に参加してくれてるからぜひ聞いてみたいね。
もりずみ:
マフィアからにじみ出して、マフィアの考えていることがコルクラボやコルクラボの外にも広がっていくのは面白いなって思っているんだよね。
先にマフィアの中で実験して、外に広がっていったのが2on2だったり、『学習する組織』の読書会だったり。
やっさんが、自分の会社に導入したいことを、先にファミリーで実験してからやっているのもいいなって思う。マフィアがフラットに実験の場になってるよね。
カディも僕も、やっさんの会社の人と読書会したことがあって。自分の会社のメンバーの意識を変えるために、マフィアを使うのも面白いなって思う。
ーー今日話を聞いて、マフィアがすごくやさしい場所だなって思ったよ。あったかい場所だねぇ。
カディ:
だからね、早く入部したほうがいいよ(笑)。読書会に参加してからでもいいし、とりあえずSlackをのぞいてみるでもいいしね。
ときどき、ラボっぽくないって思うことも話しているかもしれないけど、一緒に成長していけたらいいよね。
ーーマフィアのことが知れたよかったなぁ。ありがとう。最後に一言もらえるかな。
カディ:
入部、まってまーす。
話し手:カディ(4期)、だいすけ(6期)、もりずみ(1期)
聞き手:えりん(5期)
登場人物:
やっさん(4期)/見守る人事
むく(6期)/鳥取在住。家族で保育園を運営
ハマー(3期)/コミュニティマネージャー
書き手:まろん(4期)
編集:みなみ(7期)
コルクラボでは定期的にメンバーを募集しています。少しでも興味を持っていただけたらこちらもぜひお読みください。